日影茶屋
葉山で名店と言えば、誰もが最初に口にするのが「日影茶屋」であろう。その名は全国的にも知られており、「葉山・日影茶屋」といえば「なるほど良い店ですね」と即答する紳士婦人も多いという。

さて、日影茶屋といっても提供するサービスによって幾つかに分かれていることをまず知っておきたい。
母体となっている「日本料理 葉山 日影茶屋」は、350年ほど前の江戸中期に、現在と同じ鐙摺の地に“料理茶屋”として創業したのが始まりという。茶屋とは言っても実質は料理が評判の宿屋といった風情で、地元で獲れる素材に趣向を凝らし、温かいもてなしが評判であったようだ。
やがて料理の評判が高まるにつれて「料理だけを頂きたい」という声も増えてきたため、1972(昭和47)年、日本料理店として新たなスタートを切った。現在でも表玄関には旅館時代の看板を展示しているが、これは旅人をもてなす心を忘れず、すべての客人を精一杯の心尽くしで迎えたいという意思の表れにも見える。

日影茶屋を訪れてまず驚くのは、古風なたたずまいだろう。風光明媚な土地に佇むこの茶屋は古くから文人達に注目され、川上眉山の『ふところ日記』、久米正雄の『破船』、松岡譲の『憂鬱な愛人』など数々の作品にも登場しているほか、夏目漱石や石原裕次郎も愛した店として世に知られている。店内は竹越し中庭を見られる椅子席のほか、個室や離れ、座敷席もあり、元旅館である利点を生かした風情ある造りとなっている。

日本料理の日影茶屋の隣には、古い蔵を改装した「菓子舗 日影茶屋」がある。こちらは1995(平成7)年に始まった和菓子部門で、日本料理部門で評判の高かった菓子を中心に扱ったことに始まり、今では菓子舗オリジナルの商品も多い。小豆の餡をかけて頂く「水乳羹」は和風ババロアともいえる看板商品で、清涼感あふれるもてなし菓子として全国から注文が舞い込むほどだ。

鐙摺港の入口あたりにひときわ目立つ洋館があるが、こちらは日影茶屋のレストラン&バー部門「レストラン ラ・マーレ・ド・茶屋」(LA MAREE DE CHAYA)である。1階は気軽に利用できるカフェ、2階は三浦の素材を使った創作フレンチのレストランで何より海を見下ろす絶景がポイント。ロマンチックでゴージャスな雰囲気が特に女性客に支持されている。1階はよりカジュアルな空間で、時折ジャズライブやディスコパーティーも開催され、盛り上がりを見せる。

本館の斜向かい辺りにあるのはケーキ部門「パティスリー ラ・マーレ・ド・茶屋」(Les Patisseries LA MAREE DE CHAYA)だ。こちらはオリジナルの洋菓子を幅広く扱っており、中でも白鳥を模したシュークリームが有名。1972(昭和47)年の創業以来、葉山を代表する洋菓子舗であり続けている。店内の格式ある喫茶スペースも、機会があれば利用してみて欲しい。
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